言語化修行中

観た舞台の感想を書きます。ストプレとダンスが好き。

行間を読みきれない

「トリガーライン」初見の団体。寺内淳志さんを観に行った。ネタバレしています。


あるテーマパークの設備耐久性にまつわる内部告発をめぐって、BSの報道番組制作チームとテーマパーク運営企業の攻防が繰り広げられる物語。内部告発者である元社員のインタビューを放送しようとする番組に、会社は様々な方法で圧力をかける。なんというか、あんまり細かいところを重視しないタイプのテレビドラマっぽさがあった。どちらかというと登場人物の心情吐露に尺が割かれているので感情面での共感はしやすいが、物語の細かい部分はいろいろ気になる。最終的に設備耐久性の件を隠蔽しようとしていたのは、その影にある粉飾決算の事実を隠すためで、なおかつその事実を社長は知らず、右腕である総務課室長の水島が指示していた、ということを番組のキャスターが突撃取材の場で突如指摘して、それでふたりとも崩れ落ちる…みたいな流れなんだけど、粉飾を知らなかった社長が動揺するのはまだしも、室長はそこまでやるなら(ここまでのクールなキャラもあり)さすがに言い逃れ用意しとけよという気が…刑事ドラマで崖に追い詰められて独白し出すのを連想しちゃった。この前の吉川から水島への「もうどうしたらいいかわからないんでしょう」みたいなセリフが伏線なのかもしれないが。水島の行動原理がいまいちよくわからん。


あとこれはわたしの理解力の問題と脚本の説明不足の両方だと思うんだけど、他にもいろいろわかんないことが多かった。

福山は社長と同じ施設で育った人間で、非行など(高校中退って言ってるし)何か後ろ暗い過去があって他人の名前を借りて裏の仕事をしている、社長は会長から頼まれたか、単に施設のよしみで福山を使っているということなんだろうけど、最後百瀬は福山を何の罪で通報したの?指名手配かなんかされてるの?あと安藤の息子はねたのって福山?(車買い替えてるから)

最後吉川が電話をかけて相手が出なくて爆笑して終わるのは、福山が度々電話してた相手(オウム)は吉川ってこと?会話の内容細かくは覚えてないけど金がもうすぐ入る、みたいなこと言ってて、福山は吉川に金の借りがある?なぜ?

吉川は倉庫で財務諸表見てたから百瀬が番組チームに渡した粉飾の証拠は吉川からだと思うんだけど(倉庫番でこんな大事なデータ触れるのも謎だが)福山が百瀬に売った個人情報のネタはなに?(人の個人情報を見るのは〜みたいなセリフあったよね?)社長の過去を売ったんだとばっかり思ってたら違った。これが財務諸表なのか?あと福山を刺したカラスってマジで何?最後に知らない概念を出さないでほしい。助けてくれ。

これを書きながら思ったが、平山が部品の耐久性不足に気付いたのって課長から資料整理を頼まれたからだけど、この課長って吉川?(普通に考えたら設備課の課長だが…)もしそうだとしたら吉川が全部を仕組んでいる?倉庫番から広報に戻れたのは粉飾決算に気づいて水島を脅したから?考えてたら何もわからなくなってきた。

水島が弁護士資格持ってるってたびたび言うのが何かの伏線なのかと思ったが、別にそういうわけでもなかった?


いろいろ言ってしまったがキャストはみんな良い、特に桧山征翔さんの福山が軽薄に振る舞う中にも薄ら寒い怖さと、最後に一抹の哀愁や孤独を感じさせてすごくよかった。平山が吉川に信じてくれる人を探しなよって言うけど、それで言うと福山のことを信じてくれる人はいないんだよな(もちろんそういう生き方をしているからもあるが)終盤、百瀬と福山の夕暮れの部屋でのシーン、照明も含めて心に残った。林田さん演じる百瀬も、ずっとあえてやや薄暗がりを歩くことを選んでいるような屈折とニヒルな食えなさを感じさせて趣きがある。終盤の杏実えいかさんの中谷もめちゃくちゃキャスターだったし、色々なことを経てきたからこその、ここ一番で見せる揺るぎない強さがとてもハマっていた。鍛治本さん演じる社長は人間すぎるほど良い意味でも悪い意味でも人間味に溢れていたし、寺内さんの吉川は最後空いた椅子にひとり座り高笑いするシーンでそれまでのやや情けない印象から一転して怖かった。吉川がいちばん内心がわかんなくて怖い。

ただ感情が強まるシーンで大半の人間の声のボリュームが大きすぎると感じてちょっと辛かった、特に叫ぶシーン。人が入っている回だと音が吸われるからあのくらいでいいのかもしれないが…。


正義と悪を明確に切り分けないというか、ひとりの人間の中にもそれらが同居する部分があり、それでも正しさを求めようとしてギリギリのラインで足掻く姿を描きたいのかなと思った(最後藤堂が上と取引して番組を残し出世するのなんてその最たるものだし…)あと倉庫で話すシーンの反響がほんとに倉庫だったな。