言語化修行中

観た舞台の感想を書きます。ストプレとダンスが好き。

夢から夢へさまよって

daisydoze「Anima」めちゃめちゃよかった!最近イマーシブってすごく増えてて、正直単価も高い界隈だから初見の団体に行くのをちょっと警戒してしまう部分もあるんだけど、本当に観に行ってよかった。ネタバレを含みます。


大きなストーリーはあるが、どちらかというと物語を追っていくというより、美しい画やダンスに見惚れているうちにクライマックスになっていたという印象が強く、その感覚も夢の中っぽかった。夢って時間や場所が脈絡なく突然飛ぶじゃないですか。まず会場のホテル自体がいろんな若手アーティストの作品を室内に展示してるアートホテルなので、部屋ごとにまちまちの強い世界観があり、そこを移動していくのが夢っぽい。ツアー形式って楽しめるか不安だったんだけど、突然現れたキャラクターに別の部屋へ連れ込まれるような展開もあり、ずっとワクワクできた。というかこれ構造が全然わかんない、何シーンあって何ループなんだ?


イマーシブの設計は行動自由度と体験の濃さを両方担保するのが難しいと思っていて、特にシチュエーションごとの定員が少ないタイプの会場だとそれを顕著に感じる。泊まれる演劇「インディゴ・ホテル」を観に行ったとき、中盤から自由行動になるんだけど、ホテルの各室にキャラクターがいる形で1シーンに数人しか入れないので、タイミングが悪いと観れるシーンがなく館内をうろうろすることになってちょっともどかしかった。(泊まれる〜はその代わりに自由行動部分のシーンをループにしているのだけど、それはそれでループを目の当たりにするとちょっとNPC感が出てしまうなと思う)。この作品も会場がホテルなので1室の定員は少ないが、まず最初に10人ずつくらいフロア別に分かれ、その後は演者側が部屋に何人入れるかのコントロールをしているので、逆に2:1とかの少人数近距離で素晴らしいダンスを観ることができ、濃密な体験ができた。あと視界にずっとストレスがなかったから、すごく適正人数で開催されている気がした。見えないのが何よりも嫌だから…。ダンスシーンがいっぱいあってよかった!ただわたしはダンスを観るのが好きな人間なのですごく満足感があったが、そうでない人がこの作品をどう感じるのかはちょっとわからないんですけど…でも何にせよ大変美しいのは確かだと思う。あと発声禁止なのも良い。


東宝が入る意味はなんなんだろと思っていたが、芝居と歌だった。この作品ってダンサーと俳優のキャストがいるのですが、ダンスパフォーマンス部分を担うキャストと台詞演技および歌を担うキャストが明確に分かれており、それが相乗効果でうまく働いてると感じた。ダンサーさんってマイムでの演技は上手い方が多いけど、発声演技は違う能力だから、その部分を別のキャストが担うのは頭いいと思う。DAZZLEは役者の録音音声に合わせた当て振りの形をとってて、あれは常設という点においては最適解だと思ってるが、短期公演では設備等々で難しいだろうし、かつその場その場での誘導が発生する構造だからこのほうがいい気がする。あとクライマックスで歌とダンスが合わさるのは生観劇だからこそのエネルギーがあり、そういえばプロの歌があるイマーシブって行ったことなかったなと気づいた。


個人的に海神が踊りもビジュもあまりにも好きで、全シーン観たい!!!ベタ追いさせてくれ!!!という気持ちに支配された。すっごい至近距離なのに1秒も目が合わないし、動きが最高に不穏で怖くて本当に好き!誘惑と虚無も素敵だったな〜!!誘惑のシーツにくるまったところから始まる2on1良すぎた。乙姫もたぶん闇堕ちのシーン以降笑うようになるんだけど、その表情がたまらなく魅力的だったし、浦島は最初に見たプロジェクターのある部屋でのダンスが、あんなに狭いところでこんなに美しいものを見せられるんだと痺れた。学芸員ルートだったはずなのだが、わりと人外シーンをいっぱい観れた気がする。

全体的に画作りが各部屋の特徴を生かしていて、これはきっと演出の力。宇宙船みたいな内装のFloatという部屋で妻を弔うシーン、海底にいるみたいでしんとした気持ちになったし、中盤のおそらく全員集合する階段の吹き抜けでのシーンがすごく美しくて、そういえばこんなに上下を見る演出って初めてかもと思ったのもあって印象に残った。あと衣装とヘアメが全員とってもかわいい!誘惑が着物ベースなのとか、ホテル従業員はみんな白ベースにチェックの模様が入ってるのとか。薬草師の人のダンス好みな気がしたからもうちょっと観たかったな〜。


劇中で飲める薬草酒のカクテルがカンパリで(おいしかった)協賛入ってるみたいで帰りに瓶ごともらえた、資本を感じる…でも劇中で自然に飲食させられるってイマーシブならではの強みだと思うし、世界観にも合っていたので、イマーシブ界隈でこういう協賛が増えたら夢あるなと思った。ただ、協賛の関係で仕方ないのかもしれないけど、お酒飲めない観客からしたらノンアルカクテルもあったらうれしいよね…!

 

総合して自由行動なくても楽しかった。自分で何を観るかを選べないし、立ち位置とかで偶発的に分けられるシーンもありそうなので、多ステしても全部のシーンを観られるかはわからないんだけど、少なくとも次は複数公演入ろうと思う。物語を追うというより世界を揺蕩うという感覚で、それが夢というモチーフに合っていてよかった。でも個人的には世界観が好きだったので、シーンの定員制約が生じないタイプの会場で自由行動ありも作ってみてほしい気持ちもある。なんにせよ素敵なイマーシブを知れて嬉しい。次作も絶対観たい。